米国のビジネスショー

昨年まで毎年この時期になるとラスベガスで行われるCOMDEXに行って、そのレポートをするのが毎年12月のレポートとなっていた。COMDEXとは、ご存知の方も多いと思うが、主にパソコンを中心としたコンピューターとその関連ハードウェア、ソフトウェアの大ビジネスショーである。毎年毎年その規模は増大し、出展者も来訪者も増加の一途をたどっていた。そのためCOMDEXの会場への出展費用はどんどん上がり、数多いラスベガスのホテルもCOMDEX期間はかなり前から、しかも1週間単位で、それも前金で支払わないと予約がとれないような状況が続いていた。

それが、昨年のレポートにもあるように、昨年から大きく変わった。数年前からすでに米国の大手メーカーでCOMDEXに出展しない企業がぼちぼち出ていたが、昨年はそれが一段と進み、IBMやIntelなど、メイン会場の中心となっていた企業が撤退し、マイクロソフトとアジア諸国(主に日本と、それに韓国と一部台湾などのアジア諸国)のショウのようになってしまったからである。

この流れが今年はさらに広がったようである。私はこのことは既に昨年の様子から考えて、容易に想像できたが、それでもその状況を見るために足を運ぼうと思っていたが、残念ながらいろいろな用事が重なってしまい、今回は自分では行かず、COMDEXに行った別の人からの情報をもとにしているので、自分の目で見た前年との比較はできないが、大体の様子はわかる。実際、内容的には行かなくても特に大事なものを見逃したという感はない。

IBM、Intel、Dell、Compaqなどは、相変わらず大きなブースを構えず、共同エリアに小さく出展したり、ミーティング・ルームだけを用意していたようである。そして、今回は日本企業でも富士通がミーティングルームだけにするなど、大幅に出展を縮小している。日本からのお客もどうやら減っていたようであるが、昨年来た人達が“COMDEXはわざわざ来る必要がないな”というような発言をしていたので、それが伝わって来る人も減ったのではないかと思われる。

キーノート・スピーチには、MicrosoftのBill Gates会長、NovellのEric Schmidt会長、Sun MicrosystemsのScott McNealy会長、Cisco SystemsのJohn Chambers社長、XeroxのRichard Thoman社長、それにソニーの出井社長など、そうそうたるメンバーがそろっていたが、出展企業が続々撤退するようでは、もはや以前のようにコンピューター業界最大のビジネスショーという面影はない。Microsoft、HPやNovellなど、まだ大きなブースを構えている米国大手企業も無いわけではないが、このCOMDEX衰退の大きな流れは変わらないであろう。

今までは米国にビジネスショーを見に来るといえば、秋のラスベガスのCOMDEXとほとんど相場が決まっていたが、もはやそれは通じなくなったといえる。COMDEXが巨大化する中、実は色々なビジネスショーは、ここ数年、むしろ細分化の傾向が多く見られている。

例えば、いま活発な動きのあるネットワーク関連について見ても、一番大きなものは、年に数回、世界中を回って開催されるNetworld+Interopであるが、これにしても、インターネット関連のものの多くは、既に別のビジネスショーに移っている。そのインターネットでは、Internet Worldが一番中心的なものと思われるが、これにしても、インターネット関連のすべてのメーカーが揃うわけではない。類似のビジネスショーがある上に、例えば、インターネット・コマースに関するものは、それだけでもいくつか存在する。

また、あらゆるものがインターネット化してきているので、もはやインターネットという幅広いくくりではなく、先ほどのインターネット・コマースとか、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)など、それぞれの分野でのインターネット化に関連したビジネスショーに細分化されている。

したがって、これからは日本から米国へビジネスショーを見にくるときには、自分の見たい分野に特化し、それに適したビジネスショーを選んで来る必要がある。また、昔のCOMDEXなどは、ハードウェア中心だったため、会場を歩いて見て回るだけでも、ある程度どのような新しいものがでているかわかったが、最近の、特に細分化されたビジネスショーに展示されているものはソフトウェアの出展が多く、単に会場をぶらぶらしていたのでは、何を展示しているのかわからない場合が多い。

そのため、会場では十分時間を取り、プレゼンテーションを聞いたり、質問を色々しないと十分理解が深まらない。COMDEXのような巨大な会場でこれをやっていると、5日間のショー期間フルにいる必要があるが、細分化された専門分野の限られたビジネスショーは、幸いその規模が小さく、ゆっくり1日かければ、ある程度の話を聞くことが出来る。色々と質問したりするためには、当然その分野の知識も必要となるので、いわゆる見物だけの米国ビジネスショーめぐりはいよいよ意味のないものとなる。本当の意味での勉強をするところになり、COMDEXに来て漫然と時間を過ごしていたのに比べると、はるかに充実したものとなるだろう。

  黒田 豊

(1999年12月)

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