Twitter使ってますか?

日本の方々にTwitterはどれほど浸透しているのだろうか? 3年前にはじまったこのマイクロブログとも言われる無料サービスが、米国で、ここ数ヶ月、急激な伸びを示している。ユーザー数は、この3月、4月とほぼ倍々ゲームで拡大し、米国で1700万ユーザー、世界で3210万ユーザーになっており、これは、1年前の160万ユーザーの20倍で、SNS(Social Networking Service)で先を行く、Facebook、MySpaceを追っている。

Twitterにあまりなじみのない方のために、もう少しTwitterについて説明すると、これは、米国San FranciscoのBiz StoneとEvan Williamsがはじめた無料のサービスで、登録すれば、ユーザーは好きなときに自分の書きたいことを140文字以内で書いて投稿することができる。そして、友人や家族等、自分の知っている人が投稿したら、それが読めるように、読みたい人のフォロワー(follower)となれば、Twitterで彼らの投稿を、リアルタイムで読むことができる。

考え方は、ブログに似ているが、140文字以内と短いので、リアルタイムで思ったことを書いたり、読んだりすることができるのが特徴だ。最初は、本当に単に、今何をしているかを簡単に書いたり、今朝の食事のことを書いたりと、他愛のないものが多く、まあ、家族同士、親しい友人や恋人の間では役に立つかもしれないが、それ以外では、時間の無駄と思う人が多かった。私もその一人だ。

そんなものに、なぜ突然ユーザーが急激に増えてきたのか、不思議に思い、少し中を見てみることにした。大体、ここ数ヶ月に書かれた、雑誌等のコラムニスト等のコメントを見ても、私と同じで、皆、これまでTwitterなど、あまり気にしていなかった。しかし、そうしているうちに、Twitterが次々と面白い使われ方をしてきて、単に家族や友人の状況を知るというだけでなく、ビジネスや社会生活面でも有効なツールとなってきた。

Twitterの大きな特徴は、そのリアルタイム性と、短い文にある。リアルタイム性を使ったいい例としては、Los Angelesの森林火災のときに、市のFire Departmentがその刻々と変わる状況を、Twitterによって、近隣の人たちに伝え、それが大いに役立ったという。また、あるコンフェレンスで、その会場で議論されていたことを、Twitterでやり取りしはじめたところ、コンフェレンス会場にいない人まで参加して、Twitter上でいろいろな議論ができたという。

また、そのリアルタイム性を生かして、リアルタイムに何が起こっているかのサーチにもTwitterは有効だ。リアルタイム性の必要がないものを調べるときには、GoogleやYahoo、Microsoftの検索が有効だが、たった今起こっていることのサーチは、Twitterのほうが上だ。さきほどの森林火災の例でも、今現在の状況を伝えるTwitterのTweets(Twitter上の投稿文を、そのように呼ぶ)のほうが、はるかに重要な情報だ。これ以外でも、例えば、つい最近AppleはiPhoneの新しいものを発表したが、その発表前のうわさの情報などを集めるには、Twitterで、いろいろな人がどんなことを書いているかを集めることが有効だった。

一方、ビジネスにTwitterを使っている会社もたくさん出てきている。会社の製品やサービス等の情報をリアルタイムに伝達するのに、Twitterは有効だ。これまでだと、見込みユーザー等に、Eメールアドレスを事前登録してもらい、その人たちにメールを送る、という方法が中心だったのが、Twitterに投稿すれば、それでその会社の製品やサービスに興味のある人たちに自動的に伝わることになる(Twitterでその会社のフォロワーになっているという前提で)。実際、パソコン大手のDellでは、現在およそ60万人のフォロワーがおり、ここ半年で100万ドル(約1億円)以上、Twitter経由のビジネスがあったと報告している。

140文字の短文というと、それでは、ろくな製品やサービスの説明ができないだろうと思われるかもしれない。確かに、その140文字だけではそのとおり。しかし、そこにWebサイトアドレスを入れておくことにより、詳しい内容を知りたい人は、そのWebサイトに飛んで行けばいい。つまり、ユーザー側は、見出しだけを見て、詳細を読むかどうかを決めることができる。ニュースを提供するCNNやNew York TimesなどもTwitterでニュースをリアルタイムに提供しており、これも見出しとWebサイトアドレスの組み合わせになっているので、とても便利だ。私の見るTwitter情報は、ほとんどがこの類だ。

また、会社が製品やサービスを発表したときに、その反応をリアルタイムに知るのにもTwitterを使っているところが増えている。普通なら、新製品を発表してから、その反応を知るのに、しばらく時間がかかるが、それがリアルタイムに、しかも、具体的な理由を含めてわかるというのは、会社にとって、極めて有効である。そして、通常はこのようなマーケット調査はお金がかかるものだが、Twitterを使えば無料で出来てしまうというのも、大いに歓迎されている。新製品の発表時でなくても、製品に対する苦情や問題点を、Twitterでウオッチし、即座に対応する、というカスタマーサポートへのTwitter利用も行われている。

会社だけでなく、芸能人なども、自分の活動の宣伝や、ファンとの交流にTwitterを使っている。若手俳優のAshton Kutcherなどは、すでに百万人以上のTwitterフォロワーがいるようだ。ユーザーからすると、時折好きな芸能人から皆に聞かれる質問に、Twitterのリプライ機能を使って答えるなどして、その人の友達気分になることもできる。ブログでも同じようなことができるが、リアルタイムに短文でできるので、お互いに会話をしているようで、より身近に感じられるのかもしれない。

このように、単に家族や友人と自分の今やっていること、考えていることをやり取りするだけでなく、リアルタイムの情報伝達、情報収集に、また、ビジネスにおける新製品発表、その反応の調査、カスタマーサポートへの利用と、Twitter開始当初には、創始者も考えていなかったかもしれないような、幅広い使われ方がされはじめ、今年になって急激に広がってきたと言える。また、Twitterは、そのAPI(Application Programming Interface)を公開しており、Twitterを、より使い易くするツールやサイトなどもたくさん存在する。

このようにして急激に伸びてきたTwitterだが、さて、そのビジネスモデルはというと、今のところ広告も何もなく、収入源を確保できていない。また、ここ数ヶ月急激に伸びてきたユーザー数も5月には伸びがわずかしかなかった。新たに参加する人も多いが、はじめてすぐやめてしまう人も多いようだ。

したがって、Twitterが次の大きなもの(Next Big Thing)のように考える人もいれば、一時的な現象と冷ややかに見る人もおり、Twitterの将来については、まだ意見が分かれている。しかし、いづれにしても、使い道は広がっており、うまく使えば、幅広い分野に使える無料のいいツールとなることは確かだ。Twitterが存在する限り、自分なりにうまい使い道を考えて行くのも、十分意味があるだろう。

  黒田 豊

(2009年6月)

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