Microsoft復活は成るか

1月の末、2014年12月末の四半期業績結果が、各社から発表された。その中では、Appleの好業績が引き続き目立っている。売上高$74.6 bil.(約8.9兆円)、利益が$18 bil.(約2.1兆円)と、前年からそれぞれ29.5%、37.4%アップした数字だ。昨年同期より46%多い7450万台売れたiPhoneの貢献が大きい。株価も最高値を更新している。

IT/インターネット業界の中心といえば、いまや好業績を出すAppleをはじめ、Google、Facebook、Amazonの4強、という感じで、今回このコラムのタイトルに取り上げたMicrosoftは、ほとんど忘れられた存在だ。パソコンのOSでは、いまも2013年に90%近い市場シェアを誇り、圧倒的な強みを示しているが、2014年に12億台売れたと言われるスマートフォン市場では、シェアがわずか3.3%、タブレットでも3.5%と、ほとんど視界に入らないような低い数字だ。

そんなMicrosoftだが、1月末に新しいOS Windows 10の詳細を発表し、注目が集まった。Windows 10の話をする前に、まずMicrosoft社の業績を見てみると、世の中の話題から遠ざかっているものの、売上は$26.5 bil.(約3.2兆円)、利益も$7.8 bil.(約9300億円)と、しっかりとした結果を出している。そして注目されるのは、株価の動きだ。Microsoftの株価は、この1年で26%上昇した。これに対し、Amazon.comは逆に26%ダウン、Googleも10%ダウンだ。

Microsoftが会社全体として上昇気流にある背景には、比較的新しいクラウド・サービスの拡大、タブレットのMicrosoft Surfaceの売上拡大がある。クラウド・サービスの売上は、6四半期連続で前年比100%以上伸び、年間売上換算で$5.5 bil.(約6500億円)まで上がってきた。クラウド版のOffice 365の契約数も920万を超え、前四半期を30%超えている。サーチエンジンのBingによる広告収入も23%伸び、Microsoftによると、Bingの米国市場シェアは19.7%になっているという。Surfaceの売上も$1.1 bil.(約1300億円)と24%の上昇だ。

このようにMicrosoftは、これまでのパソコン向けのWindowsやOfficeから、クラウドやタブレット等の新しい分野にビジネスを広げ、それがようやく軌道に乗りつつある。そして、Windows 10の詳細発表となった。Windowsは現在Windows 8が最新バージョンだが、発表当時から評判が悪く、現在でもその前のバージョンであるWindows 7を使っている人や企業が多い。原因は、タブレットにも対応できるようにしたため、その使い勝手がこれまでのものと大きく異なり、使い難いという評判になってしまったからだ。そこで、今回は、Windows 8の問題点を解決するだけでなく、これからの大きな飛躍という意味を込めて、Windows 9を飛び越え、Windows 10という呼び名にしており、Microsoftの強い意気込みが感じられる。

Windows 10が実際に使用可能になるのは、今年後半だが、その内容に市場は大きく反応し、新聞等でも大きく取り上げられている。まず注目されるのは、MicrosoftがWindows 10を「サービスとして提供する」という言い方をしていること。そして、モバイル第一(Mobile first)、クラウド第一(Cloud first)の新しい時代を始めるためのもの、と宣言していることだ。これまでのWindowsは基本的にパソコン用であり、パソコンの領域では圧倒的な強さを誇っていたが、市場はスマートフォンやタブレットに流れており、そちらではほとんどWindowsの影すら見ないような状況だ。巻き返しを図ろうとそれぞれの分野で動いているものの、いまだ失地を回復する見込みは立っていない。Windows 10は、その最後のチャンスと言ってもいいかもしれない。

Windows 10をサービスとして提供する、と言っても、Windows 10がクラウド上にあるというわけではなく、それぞれのデバイスに組み込まれるというのは以前と同じだが、今後のOSのアップグレードは無料で行う、という大きく注目を浴びているものが入っている。また、現在Windows 7やWindows 8および8.1を使っている人は、Windows 10へのアップグレードが、Windows 10が出荷してから1年以内は無料だ。市場ではMicrosoftがこれによって、最初の1年で$300 mil.(約357億円)から$500 mil.(約595億円)の売上減になると予想している。この数字がどのようにして出されたかわからないので、その可能性の確度はよくわからないが、個人的には、さほど大きな売上減にはならないのではないかと思っている。

何故かというと、多くの人や会社は、数年に一度、高速低価格になったパソコンに買い換える。そのときにOSも新しいWindowsにする場合が多いからだ。これが事実だとすると、新しいWindows 10は、無料アップグレードを利用するのではなく、結局買うことになる。旧版Windowsからの無料アップグレードの条件の詳細がわからないので、私の間違いの可能性もあるが、そうでなければ、一見Microsoftがユーザーに大きな利益を提供しているように見えるこの発表も、結果的にはMicrosoftにそれほど大きな売上減をもたらさず、実質的なマイナスが少ない中で、うまい宣伝効果が得られている、ということになる。

もうひとつの、モバイル第一、クラウド第一のWindowsという点では、パソコン、タブレット、スマートフォン、さらには画面を持たないセンサーなど、これから大きく市場が拡大するといわれているInternet of Things (IoT) の世界でも、Windows 10が使われるという。そのため、複数デバイスで使えるアプリケーションは、開発者側もひとつのソフトウェアを開発すれば、すべてのデバイスに対応できると言っている。

この考え方は、AppleやGoogleでも用いられているが、所詮それぞれのデバイスで持っているハードウェアの能力、画面の大きさ等に大きな違いがあるので、全く同じソフトウェアがどんなデバイスでも使える、という話になることは難しく、互換性を最大限に持ったものになる、ということだろう。デバイス間でシームレスに移行できる、という面でも同様だ。いろいろなデバイスで、どれだけ互換性があるか、デバイス間でどれほどシームレスに使えるかは、Windows 10が実際使用可能になってみないとわからないが、方向性としては、ユーザー、そしてソフトウェア開発者いずれにとっても、いい方向なのは間違いない。

個別の新しい機能では、ホログラフィー機能、そしてそれを実現するMicrosoft HoloLensに注目が集まっている。Microsoftは、パソコンを含む各種デバイスを使うユーザー・エクスペリエンスに、人がより自然に感じられる音声、ジェスチャー、視線などを使おうとしており、ホログラフィーもその一環と言える。これは、Google GlassとFacebookが昨年買収したOculusのヘルメット型のOculus Riftの中間的なもので、主にAugmented Reality(実際に見えているものにオーバーラップさせて、いろいろな情報等を表示するもの)に使われる。空間で手や指を使って操作も出来るという。実際に使い勝手がいいかどうかわからないが、一般向けの利用はともかく、ゲームでの利用や、機器の設置や保守などの作業現場等での利用は十分考えられる。

これ以外では、AppleのSiriに似たパーソナル・アシスタントのCortanaが、スマートフォンだけでなく、タブレットやパソコンでも使えるようになる。AppleのSiriは、3年以上前に市場に出てきて以来、あまり大きな進歩を遂げているように見えないので、Cortanaが追いつくチャンスもまだある。新しいブラウザー(コードネームProject Spartan)も予定されている。

さて、これらの新しい機能でMicrosoftは復活することができるか。タブレットはパソコン的な使い方も十分考えられるので、すでに売れ始めているMicrosoft Surfaceの売上向上に貢献すると思われる。また、パソコンでの地位も簡単に揺るぐことはないだろう。問題は市場が大きく、今後も市場の伸びが期待されるスマートフォン市場だ。ここでMicrosoftがどれだけ市場を取り返すことができるか。また、これから大きく広がるIoTの世界で、どれくらいWindowsが広まっていくか。そして、MicrosoftがApple、Google、Facebook、Amazonなどに伍して、5番目の注目企業に復活できるかどうか。これからのWindows 10、そしてMicrosoftの動き、市場の反応が注目される。

  黒田 豊

(2015年3月)

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