Googleの将来に暗雲?

Googleといえば、インターネット関連でいま破竹の勢いの会社、そのためMicrosoftはGoogleに追いつくためにYahoo買収まで仕掛けている。そのGoogleの将来に暗雲と聞いて、まさか、と思う人は多いかもしれない。しかし、その兆しがあることは確かだ。勿論、Googleはここ数年でかなりの利益を上げ、資金的にもふんだんに持っているので、倒産の危機に陥る、などという話ではない。したがって、暗雲という言葉はちょっと大袈裟かもしれないが、これまでのような勢いがなくなる可能性は十分ある。

では、今のGoogleのどこに問題があるのか。兆しは、まずGoogleが得意とする検索連動の3行広告のクリックによる広告ビジネスの伸びが止まりつつあることだ。これまでは前年比50%ほど増加していたのが、昨年第4四半期ではその増加率が30%に下がった。さらに詳しく見ると、12月には、前年比わずか10%程度しか伸びていない。そして、今年1月は、ついに0.3%だが、前年を下回ってしまったのだ。月ごとの推移でみると、昨年11月から12月には7%、12月から1月にかけても、同じく7%、クリック数が減少している。

さらに、この3行広告をクリックされることが、思ったほど売上やブランドイメージ向上に役立っていないのではないか、という話も出てきている。この2月にインターネットの調査会社が発表したところによると、ディスプレイ広告へのクリックの半分(50%)以上は、全体のわずか6%の人によるものであり、しかもそのほとんどが年収$40,000以下、オンライン・ショッピングを行うユーザー層全体の15%にしかならない、という報告だ。

これらの報告を見て、またGoogleの株価が高すぎる、という観測から、現在のGoogleの株価は、昨年11月に記録した最高値747ドルから、440ドルへと、41%も下落している。Googleもクリックだけで広告主に費用をチャージするシステムの不備を感じており、単にクリックするだけでなく、さらにその先のユーザー登録や物品の購入までいったときのみ費用をチャージするシステムを準備中だ。このシステムを使えば、広告の有効性はより明確にわかることになるが、もしそれで広告の有効性が低いことがわかれば、逆に広告収入の低下にもなりかねない。

この検索連動広告に対するクリックの減少に対し、新聞等では、米国の景気後退が影響し、消費者がクリックする回数が減っているのではないか、という指摘がなされている。それも一因であることは確かだろう。しかし、私は、むしろそれよりも、3行広告があまりセールスに結びつかない、という実感がこのような3行広告を出している企業に広がり始め、景気後退も影響して、検索連動3行広告を出す企業が減っているのではないかと思う。

それと、検索連動広告が始まって数年が経ち、一度このような広告を出してみようと思う会社は、もうすでに試してみた、という時期にきているのではないだろうか。だから、新規に検索連動広告を出してみようと思う会社は、少なくなってきていると考えられる。この検索連動広告は、これまで広告を出したことがないような多くの中小、零細企業が、少ない資金で簡単に広告できる、ということで、今までになかった市場を作り出した。これはとても大きなことだが、この新市場も、そろそろ成熟しはじめ、新たな拡大が見込めなくなってきたのではないか、という気がする。これに、景気後退も影響して、いままで検索連動広告を出していた企業が、撤退を始めたのではないか、というのが私の見方だ。

もちろん、クリック広告の増加が止まって来たのは、今のところまだ短期間の話なので、この傾向がそのまま続くかどうかは、今後しばらくの状況を見極める必要がある。しかし、仮に今回のクリック広告の伸びの停止が一時的なものだったとしても、本当に検索連動広告市場が飽和するときが、いづれ来るのは間違いない。単に時期的な問題なだけだ。したがって、Googleも、これまでのビジネスモデルだけで、いままでのような勢いで成長を続けることは難しい。このようなことはGoogleも当然予想していただろうし、だからこそ、勢いのあるうちにYouTubeを買収するなど、次の手を模索している。

先月の「MicrosoftのYahoo買収、是か非か」で書いたように、私はこれからのインターネット広告ビジネスの大きな部分は、今Google等がやっているような検索連動広告の延長線上にはないと考えている。むしろ、いままでテレビ等に使われている膨大な広告費をいかに取り込むかが一番の問題だ。これは、検索連動広告ではない。

日本では、いよいよNGN(Next Generation Network)が始まり、本格的なブロードバンド・ネットワーク時代に突入する。これを使ってテレビ番組がインターネット経由で配信され始めたら、これまでのテレビ広告は、インターネットに移ってくる。日本ではテレビ各局が著作権問題等を盾に、このような動きは遅いが、米国の主なテレビ局は、そのほとんどの夜の番組をインターネット上で既に配信している。今はテレビ番組のワクに入れない独立系の人たちによるテレビ番組的なものも、これからインターネットでどんどん配信されてくるだろう。YouTubeもその一翼を担う可能性は十分あるが、YouTubeが、今のように素人からの短いビデオの投稿中心であれば、これに広告費は使われないし、ユーザーも、このようなビデオ・コンテンツにお金を払ったり、広告を見たりすることは、まずない。

しかし、プロの人たちが本格的に作った番組に対しては、お金を払ったり、無料でも広告を見ることに、ユーザーも抵抗はあまりないだろう。これこそが、今後のインターネット広告の大きな部分であり、この分野を誰が制するかが大きな問題だ。今年はYahoo Japanがパリーグの野球放送を全試合、インターネットで配信することになったようだが、これは、このようなインターネット経由のビデオ配信に大きな一石を投じることになるかもしれない。

Googleに、このようなビデオ配信が出来ないとは言わないし、豊富な資金、YouTubeという人気ビデオサイトを持っているということで、この新しいビデオ・コンテンツに伴うインターネット広告市場で、Googleが大きなポジションを取ることは、十分あるだろう。ただ、これは現在の検索連動3行広告の延長線上にはない。あくまでGoogleが次の大きなステップにうまく進んだ場合だけ、可能となる。そして、この戦いはまだ始まったばかりだ。Googleが、少し見えてきた将来の暗雲を振り払い、引き続きインターネット広告業界でリードを続けられるかどうか、今後の動きに注目したい。

  黒田 豊

(2008年3月)

ご感想をお待ちしています。送り先はここ

戻る