これからは、音声メッセージングの時代?

先日、Wall Street Journal紙に、音声メッセージング(Voice Chat)の話が出ていた。確かに、と思うところがあったので、そのことについて書いてみたい。われわれは、いつの間にか直接話をしたり、電話で話すことが少なくなってきている。会社内でも、すぐ近くにいる上司や同僚と連絡をするのに、直接話しに行かず、メールで送ってしまう場合が増えている、という話をよく聞く。なんで、そんなことをするのか、と言う人も少なくないが、それなりの理由もあるように思う。

メールは相手がそのときにいなくても、また忙しくて相手ができない場合でも、送ることができ、便利なことは確かだ。私は、すぐ近くにいて、直接話ができる人にまでメールで対応する、ということはあまりないが、離れた人に電話する、ということは、随分少なくなったように思う。自分で受ける場合も、電話よりメールによるほうが、自分の都合のいいときに読むことができ、急ぎのものはその場で対応するものの、急がないものは、ゆっくり対応できるので便利だ。また、私のように、カリフォルニアにいたり、日本にいたり、という人間にとっては、時差の問題もあるので、メールでのやりとりのほうが都合がいい場合が多い。

さらに、最近は電話がかかってきて、それを取っても、広告などの電話も多く、しかも人間が直接話すのではなく、録音されたものを聞かされる、いわゆるRobocall(ロボット・コール)も多く、電話に出て損した、と思う場合も多い。通常の広告などの迷惑電話は、米国ではDo Not Callというリストに自分の電話番号を登録しておくと、掛けて来ないように出来るが、このRobocallは、そのシステムを巧みに回避する機能を持ったものも増えていると言われており、やっかいだ。そして、そんな電話に出てしまうと、その電話番号は確実に繋がる電話だ、ということが証明されてしまうため、その電話番号が別な業者の広告用に売買される、という話も聞く。そのため、結局電話が鳴っても出ず、留守番電話に入れてもらって、それを聞いて電話を取る、あるいは、あとで掛け直す、という場合も少なくない。

とはいえ、メールのやりとりも、面倒な点もある。言葉でしゃべるのに比べ、文字でそれを打つとなると、当然時間もかかる。また、文章というものは、よくよく考えて書かないと、相手に誤解を招く恐れもある。こちらが冗談半分に言ったことでも、メールの文章だけ読むと、何か怒っているように聞こえる場合も少なくない。そのため、誤解されないよう、文章の最後に(笑)などと付ける場合もある。もっとも、ビジネスのやり取りでは、あまり(笑)などと付けるのも失礼なので、難しい。

これが直接会って話せば、その声の調子、表情、身振りなどで、どのようなつもりで話しているかがわかるので、誤解を招く可能性は、かなり減る。相手が離れていても、メールではなく、電話で話せば、声のトーンで、怒っているのか、冗談で言っているのか、また、何かをお願いしているのかなど、人の気持ちが伝わり、誤解も少なくなる。

一方、電話だと、最初に挨拶のやり取りがあり、最後にも終わりの挨拶があるなど、本題以外の話で時間を取られてしまう、という問題も指摘されている。相手が電話に出てくれない場合は、無駄な時間を使ってしまったことにもなる。留守番電話に内容を残すことができる場合も多いが、それが聞いてもらえたかどうか、また、いつ聞いてもらえたかも、わからない。

実は、Eメールでのやりとりでも、最初の挨拶や最後の挨拶などの気遣いが、ある程度は必要になる。また、メールが読んでもらえたかどうかも、わからない場合が多い。

そんな中、メッセージング(チャット)では、短い文章で、最初の挨拶などなく、単刀直入に本題の話がしやすい、というメリットがある。また、相手がいつそのメッセージを読んだかがわかる機能を備えたものも多い。そして、相手がその場にいれば、すぐに返事が来て、やりとりすることが可能だ。

メールに比べ簡単なやり取りができるため、特に若い人たちは、メールをあまり使わず、メッセージング・アプリでやり取りすることが多いようだ。そのため、米国ではFacebook Messenger、Snapchat、WhatsApp、中国ではWeChat、日本ではLINEなど、メッセジング・アプリがさかんに使われ、多くのユーザーを持つようになった。

メッセージングは、Eメールの面倒臭さを省いた点はよかったが、それでもまだテキストのやり取りなので、文字を打ち込む手間は必要だし、文章による誤解の可能性も残る。特にスマートフォンでのやり取りを考えると、小さな画面上で、限られた画面上のキーボードを使って文章を打ち込むのは、あまり便利とは言えない。もっとも若い人達は、あまりそれが苦にはならないように見えるが。

そこで出てきたのが、音声メッセージング(Voice Chat)だ。メッセージの内容は、テキストで書くのと同じくらいに簡潔にできる上、音声なので、直接感情も伝わる。相手の声が聞きたいという要望にも応えられる。そして、電話のように電話番号を探してから通話を始める面倒さもなく、最初と最後の挨拶も必要ないし、相手がその場にいなくても、問題ない。

では、こんな音声メッセージングは、どのように使うか。特に難しい話ではない。すでに何かメッセージング・アプリを使っているのであれば、その多くは音声メッセージング機能を備えている。

実は、こんなことを書いている私は、電話はもちろん、Eメールやメッセージングは使っているものの、音声メッセージングは、まだ使い始めたばかりだ。これまでは、自分から音声メッセージを送ったこともなかったし、相手からもらったこともない。ということは、まだそれほど普及していないのかもしれない。皆さんはすでに使っているでしょうか? 一度使ってみてはいかがでしょう? 私ももっと使ってみようと思います。

  黒田 豊

(2018年8月)

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