影響力を増すブログ(Blog)

もうかなり使われる言葉となったので、ブログ(Blog)が何かを知っている人がほとんどであろう。ブログとは、Web Logを短くしたもので、Web上に書いたLog、つまり記録とか日記的なものである。今や全米で約800万のブログが存在し、ブログを読んでいる人は、3200万人いるというサンプリング調査からの推定も出されている。私の書いているこのコラムは、ウェブマスターが管理し、運営しているものなので、厳密にはブログとは違うが、このようなコラムも、広くブログということもできるだろう。

そもそもブログは、個人が自分の日記のようなものとして書き始めたものだ。インターネットによって、出版というほど大げさではないにしても、誰でも自分の意見を世界に向けて述べることができるようになったわけだが、それを実践するのがブログだ。ブログの楽しいところは、見ず知らずの人から、自分の書いたことに感想のメールが来たりするところだろう。自分で書いたブログに、返事がいろいろ来ると、自分の書いたものを読んでくれる人がいることがわかり、また、自分の意見に対する反応もわかるので、どんどんブログを書くのが面白くなってくる。

使いやすいツールなどのおかげで、ブログが簡単に書けるようになったので、子供や時間に余裕のある主婦など、たくさんの人がブログを書いている。自分の趣味について書いたり、政治や社会に対する意見を述べるものもある。他愛のないものも多いが、探せば役に立つものもいろいろとある。ただ、ウェブ上のものなので、知っている人の書いているブログはともかく、知らない人の書いているものは、その信憑性はわからない。また、単に自分の感想や意見を述べているのか、それとも意図的に何かを目的にして書いているのかもわからないので、読む側としては、十分自己責任を認識しつつ読む必要がある。これはインターネットの他のウェブサイトと同じことである。

このような気軽で楽しいブログであるが、最近、問題も発生している。それは、ブログ中毒になってしまう人がいることである。最初は趣味でブログを書き始めたものの、読者からメールをもらいはじめると、毎日ブログを書かないではいられなくなってしまう。これは、読んでくれる人がたくさんいるから書きたい、というところからはじまるが、そのうち、読んでくれる人がたくさん待っているから、毎日書かないといけない、という風に義務感になってしまい、時間を束縛されるようになってしまう。それによる寝不足、家事の怠り、学生で言えば、勉強時間がなくなる、などということが発生する。また、今日書いたブログに対する反応がいつもより鈍かった、というようなことで、精神的に落ち込んでしまったりという場合もある。しかも、ブログは誰もお金を払ってくれるわけではないから問題である。

しかし、ブログそのものでお金をもらうことはできなくても、本当に大勢の人を引き付けられるブログを書きつづければ、それが収入につながる場合もある。あるブロッガ-(ブログを書いたり読んだりする人)は、政治に関するコメントをいろいろ書いていたところ、毎日の読者数が40万人近くになり、ついにはそのブログサイトに広告を出したいという会社が現れ、年間10万ドル(約1,000万円)の広告収入につなげることが出来たというケースもある。 ただ、これは、やはり例外というべきで、個人のブログは、他の趣味でも同様だが、生活に悪影響を及ぼさない範囲にしておく必要がある。

さて、この基本的には個人がベースのブログが、ビジネスの世界にもかなりの影響をもたらし始めている。ビジネスに関連するブログを、ビジネス・ブログとも言う。例えば、ワインをウェブで売っているサイトが、人集めにワインに関する情報をブログで書き始めたら、サイトへのアクセスが急に増加した、という話は多い。このようなものはよいが、市場に出回っている商品に関するブログを誰かが書き出すと、その商品を販売している会社にとって、大きな問題となる。よい評判が書かれていれば、それは、宣伝効果もあるので、喜ぶべきであるが、逆に問題点をいろいろと指摘されていると、その商品の評判を落とし、不人気商品になってしまう可能性も十分ある。

そこで、最近では消費者向け製品を販売している会社は、常に自社について、また自社製品についてのブログの動向に注目することが重要になってきた。そのため、会社によっては、自社に関連するブログを常にチェックし、もし問題がある意見がいろいろと出ていたら、必要に応じて反論するなど、対応策を考え始めている。

ブログで指摘される問題点は、市場での商品に対する評判を落とすという問題もあるが、逆に、自社ではわからなかった商品の問題点を見つけてくれ、それに対する対策を打てるという大きなメリットもある。このような商品に対する問題点を指摘してもらうのに、アンケート調査などをやっていては、時間もお金も相当かかるが、それがお金をかけずに出来るのであるから、会社にとっては、大きな市場ニーズ分析ツールにもなってくる。

そういう意味で、企業、とくに消費者向け製品を販売している会社にとって、ブログは諸刃の剣であり、うまく利用していくことが極めて重要になってきている。ただし、ブログを活用して、自社商品をほめるブログばかりを書くようなことは勧められない。これは、他のブロッガ-からすぐに、会社が宣伝のためにブログを利用していると見られ、そうなると、今度は逆効果で、その会社の評判が落ちることになるからである。

会社の社員の書くブログには、他にもいろいろ注意すべき点がある。例えば、会社の内情を書いたようなブログは、当然会社として禁止しなければならない。また、会社の社員が、会社について、あるいは会社の製品について書くと、仮に、これは個人的な意見ですという注意書きを入れておいても、読む人は会社の意見と取りかねない。また、会社の社員がブログに書いたアイディアなどは、誰に所属するものか、つまり著作権の問題も発生する。今のところこれに関しては、はっきりしていない。会社側も、著作権を主張すると、今度は、その書かれたものについて、外部に対して責任を持たなければならなくなり、このような社員のブログを事前にすべてスクリーニングすることは、かなり難しいからである。

いずれにしても、ブログの世界はまだまだはじまったばかりである。これからいろいろな問題が発生し、それを皆で解決しながら進めていくということになるだろう。個人にとっても、会社にとっても、ブログから目がはなせないくなってきた。

  黒田 豊

(2005年3月)

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