話題の多いGoogle
インターネットのサーチエンジンで有名なGoogleの話題が尽きない。Googleについて書いたのは、ちょうど1年前だったが、そのときには、2004年8月の米国NASDAQ市場への久しぶりのインターネット関連株としての上場、オークション方式による上場株式発行、そしてその後数ヶ月で株価が2倍になったということが話題だった。株価について言えば、その後さらに上昇して300ドルを越え、上場時の4倍近くになっている。株式時価総額、P/E比などはかなり高い水準だが、インターネット広告の拡大、Googleのビジネス拡大への期待感から、さらに上昇しそうな気配である。いまや、Googleは、Yahoo、eBayなどと並んでインターネット企業のエリート集団に入っており、MicrosoftもGoogleに対する競争心をあらわにしている。
さて、そのGoogleにいろいろな話題が尽きない。まずは、多くの優秀な人材採用に動いたことが上げられる。たとえば、インターネットのはじまりから深く関わっているVinton Cerf氏を通信キャリアのMCI社から引き抜き、Vice President兼Chief Internet Evangelistとして受け入れた。Cerf氏の採用は問題なかったが、MicrosoftのVice
PresidentであったKai-Fu
Lee氏がMicrosoftを退職した直後にGoogleに入社し、中国担当となったことは大きな問題となっており、両社の関係がこじれている。MicrosoftとLee氏の雇用契約では、もしLee氏がMicrosoftを退職した場合、1年間は競合企業に勤務しない、という条項がある。そのため、MicrosoftはLee氏およびGoogleをWashington州の裁判所に訴えている。ところがGoogleはCalifornia州の会社であり、Lee氏はすでにCalifornia州の住民になっているので、Washington州の法律は適用せず、このような競合企業に勤めてはいけないという契約が認められないCalifornia州の法律に則って、問題はないと主張し、こちらはCalifornia州の裁判所に提訴している。決着がつくのは、双方で示談が成立しない限り、来年以降になる予定である。
別な話題としては、Googleはインターネット上のあらゆる情報、ひいては世界中のあらゆる情報を検索できるようにしたいと考えており、そのため、世界中の書籍を入力して電子化し、検索できるようにしたいと考え、Google Print Library Projectを発表し、実行に移そうとしている。これに対して、著作者のグループであるAuthors
Guildからの著作権違反の訴えに続き、全米300の主な出版社が加盟しているAssociation of American Publishersも同様の著作権違反の訴えを起こしてしまった。Googleは事前に彼らと話し合いを持っていたが、残念ながら合意にいたらず、裁判所に訴えられることになってしまった。
また、別な話としては、Googleが、最近問題になってきているSplogsの蔓延に一役買っているという問題の指摘がある。Splogsとは、SpamとBlogの合成語で、さしずめ最近急激に広まっているBlogのSpam版と言ったところである。広告宣伝のための迷惑メール(Spamメール)を勝手にたくさん送ってくることに困惑している人も多いと思うが、最近はBlogでSpamのようにいろいろな広告をするものが増えている。Blogを読む場合、すでに知っているBlogを見に行く場合は問題ないが、キーワードで興味のあるBlogを探すと、このようなSplogに引っかかる場合がある。毎日70,000の新しいBlogが作られていると言われているが、そのうちの5%前後がこのSplogだという話である。これに何故Google関係があるかというと、これらSplogの多くはGoogleが無料で提供しているBloggerサイトおよびツールが使われている場合が多いためである。何故GoogleのBloggerが多く使われているかというと、簡単にBlogが作れ、しかも無料だからということのようだ。ということはGoogleがいいものを出している証明のようでもあるが、厳しい人から言わせると、Splog対策が何もされていない、ということになる。
上のいくつかは、Googleが批判されているような内容で、ネガティブなものとも言えるが、もちろんポジティブな話題も多い。Googleをウェブ上の情報検索エンジンとして使っている人は多いと思うが、Googleのマップ機能も最近よく使われている。世界中の地図が入っていて、ズームすることによって、かなり詳細な地図までたどりつくことが出来、さらにサテライト画像が見えるので、回りの状況がよくわかる。また、マウスで簡単に位置を移動できるので、使い勝手がよい。これを利用し、単に地図やそのあたりの景色を見るだけでなく、他のアプリケーションと組み合わせていろいろサービスすることが広がり始めている。不動産関連のアプリケーションが多いことは容易に想像が出来る。
このようなGoogleマップと他のアプリケーションの組み合わせは、Googleがソフトウェアのインタフェースを開放し、誰でも自由に組み合わせソフトウェアを作って新しいアプリケーションを構築できるようにしているためでもある。このようにGoogleマップに新たなアプリケーションを加えた、通称「mash-ups」と呼ばれているものが色々と出現している。例えば、HousingMaps.comというサイトでは、不動産情報とGoogleマップをうまく組み合わせて、地図上から物件を探し出すサイトを構築している。
Googleはまた、その潤沢な資金をもとに、まだ若い会社にもかかわらず、社会貢献のためのファンドを作っている。最初のファンドは9000万ドル(約100億円)で、規模的にはCiscoやIntelのものに匹敵する大きさである。今後20年間でGoogle株式300万株分(現在の時価でおよそ1000億円)を寄付する予定である。そして、寄付先も、貧困、環境、エネルギーといった、Googleのビジネスに直接関係したものというよりも、本当に社会のためという色彩が強くでている。
たかがサーチエンジン、されどサーチエンジン、などというレベルではなく、インターネットの世界では、サーチエンジンが、大変重要なものであることは、実際に毎日使っていると誰でもよくわかることだろう。インターネットで何かを探そうとすれば、まずはサーチエンジンである。それだけ、インターネット・ユーザーはサーチエンジンに頼っているということだ。Googleはあくまでも情報のサーチを事業の中心においているが、そのためにはコンテンツが大事ということで、America
Online(AOL)への出資も、ケーブルテレビ大手のComcastとともに動いている。また、San
Francisco市に対しては、市全体に無線インターネット接続を提供する提案も行っている。これは無料のインターネットを提供することにより、さらに多くの人にインターネットを使って情報をサーチしてもらい、ロケーション情報をもとにした広告提供収入によって売上をかせぐビジネスモデルのようだ。ここまでくると、Googleがこれからのインターネットの世の中で、大いに注目されているのもうなずける。Googleは、Yahoo、eBayとともに、目の離せない存在である。
黒田 豊
(2005年10月)
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