本格的に広がるインターネットとモバイルを活用したアプリケーション

今年も早や師走となった。この1年、そしてここ数年を振り返ってみると、IT、なかでもインターネットとモバイルを活用した多くのアプリケーションが本格的な広がりを見せている。幅広い分野にわたるアプリケーションもあれば、ややニッチなものもあるが、その主なものを挙げると、以下のようになる。

• ビッグデータ分析
-- インターネット・ユーザー行動分析
-- センサーからのデータを分析するIoT
(Internet of Things)分析

• クラウド・コンピューティング
-- IaaS(Infrastructure as a Service)
-- SaaS(Software as a Service)
-- PaaS(Platform as a Service)

• シェアリング・エコノミー(例、Airbnb、Uber)

• メッセージング・サービス(例、LINE、WhatsApp)

• ウェアラブル端末と関連サービス(例、ヘルスケア)

• インターネット・ビデオ配信(例、テレビ番組)

• モバイル・ペイメント(例、Apple Pay)

• Eコマース(新段階)
-- ニッチ市場
-- CtoC(Consumer to Consumer)
-- 食品配送

• パーソナル・アシスタント

上のいずれもがインターネットをベースとしており、また、ほとんどのものがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末利用を前提としている。ビッグデータ分析には、高速処理や非定型データに対応するための技術、さらに分析のためのAI技術の発展が大きく貢献している。ビッグデータ分析によって、個々のデータだけを見ていたらわからなかった全体像、Big Pictureが見えるようになった。また、その一方、ユーザー行動分析や、たくさんのセンサーからのデータをもとに、ユーザー個人や、特定箇所の状況などが詳細にわかるようになった。全体を見るマクロの目と、個別の詳細を見るミクロの目が同時に得られることになった。

ビッグデータ分析でできることは無限にあると言っても過言ではない。あとは、分析結果を使って、如何に有用なことに結びつけるか、アイディアとコスト・パフォーマンス、採算に乗せられるかの勝負だ。

クラウド・コンピューティングは、いくつもの企業でITリソースやアプリケーションを共有することによって、ITコストを下げることが可能となった。それだけでなく、ビッグデータ分析を含め、スマートフォンやタブレットを使って、いつでも、どこからでも来る情報を分析するのに、必要不可欠なものだ。

空いている部屋を有効利用するAirbnbや、タクシーの代わりに車の共有をビジネスにするUberなどは、シェアリング・エコノミーを一気に一般ユーザーに広げている。ただ、一般の人たちが持っているものを共有しているので、サービスの品質を保つことや、問題があった場合の解決方法を、如何にうまく整えるかが課題だ。

メッセージング・サービスは、特に若い人たちの間で急激に広がり、SNS最大手のFacebookも、あわてて190億ドル(約2.2兆円)という高額でメッセージング・サービス大手のWhatsAppを今年2月に買収したほどだ。日本ではLINEが強く、LINE用自作スタンプを開発して1000万円を稼ぐ人が多く出るなど、一般ユーザーにもビジネスになる機会を提供し、影響範囲が広がっている。

ウェアラブル端末は、ヘルスケア、中でも医療ではない健康、フィットネス向けのものを中心に広がりを見せている。Appleが今年9月にApple Watchを発表し、2015年はじめには出荷が始まるということで、スマート・ウォッチ市場にも火がつきそうだ。今後は、より医療に近いところでのウェアラブル端末利用が広がり、家庭でのリモート・ヘルスケアへの応用が期待される。

インターネット・ビデオ配信については、先月も書いたが、いよいよ大きなうねりとなり、これまでの放送業界、ケーブルテレビ業界などに大きな変化が起こる兆しだ。既存ビジネスモデルを壊されつつあるケーブルテレビ会社やテレビ局は、この新しい世界でどのようにビジネスチャンスをものにしていくか。新興勢力は、強力な既存プレーヤーに対して、どのような戦いを進めていくか。誰がユーザーの心をとらえ、勝者となるか、注目される。

モバイル・ペイメントについては、米国ではクレジットカード利用が非常に進んでいるため、プリペイド・カードへの拒否反応が強く、これまでは成功していなかった。しかし、今年9月にAppleが発表し、すでに利用可能なApple Payでは、クレジットカードを使った支払いを、iPhoneやこれから出てくるApple Watchでできるようにしており、米国人にとっても受け入れられやすいものだ。あとは、Apple Payを取り扱える機器を、どれくらいのお店が、どれくらいの早さで導入するかにかかっている。

Eコマースも、新段階に入ってきた。個別の店によるEコマース、Amazon.comのような、何でも売っているデパート的なところに加え、特定分野の商品を売るニッチなサイトで最低価格を保証するところなどが登場している。それに、一般ユーザーが物を売るCtoCのEコマースサイトなども広がりを見せている。そして、インターネットが始まったころにうまくいかなかった、食品配送も、モバイルを駆使することによって、うまく行き始めている。何年も前からすでに成長期に入っているEコマース分野でも、まだまだその進化は止まらない。

AppleがSiriで先駆けたパーソナル・アシスタントは、その強力な支援者であったスティーブ・ジョブズが亡くなってから、少し進歩の速度が遅くなっているようだ。しかし、Siriを作った人たちがふたたび別な会社を立ち上げるなど、その動きは今後も注目される。これまでユーザーは情報を見つけるために、サーチエンジンを使う場合が多かったが、パーソナル・アシスタントが広まれば、ユーザーと直接インターフェースを持つのは、パーソナル・アシスタントに代わる可能性があり、サーチエンジンで圧倒的な強みを発揮しているGoogleも、安閑とはしていられない。

インターネットとモバイルの組み合わせにより、いつでも、どこでもをキーワードに、新しいものが次々と出来上がってきている。これからの何年かは、インターネットとモバイルを活用した新しいビジネスが、さらにたくさん登場してくるだろう。一般ユーザーにとって、どんどん便利な世の中になってくるし、これは企業や個人にとっても、大きなビジネス・チャンスだ。アイディアしだいでお金儲けができる、面白い世の中になってきた。

  黒田 豊

(2014年12月)

ご感想をお待ちしています。送り先はここ

戻る