今年のCES、主役は変わらずAI
毎年1月はじめに、米国ラスベガスで行われるCES(旧Consumer Electronics Show)。シリコンバレーからの日帰り訪問で見た、全体的な感じを書いてみたい。今年も主役はAI、中心は”AI Everywhere”だ。AIがどこでも使われる世界、そしてロボットなどのPhysical AIが多く展示されていた。Keynote Speechは、AI向けチップで飛躍的に事業を拡大しているNvidiaを含め、各界のCEOが、こぞってAIによって生まれる新たな世界について話していた。
AI関連展示は、数年前からあり、以前は「AIを搭載した製品」というものが多かったが、昨年あたりから「AIによるソリューション」という展示が多くみられ、今年はPhysical AI(ロボット+AI)としてのロボットの展示を含め、「AIで大きく変わる世界」に焦点が当てられていた。NvidiaのHuang CEOの話も、AIの中でもPhysical AIの到来について、多くが語られていた。
メイン会場の中心に大きな展示ブースを持つ韓国のLG Electronicsは、家庭内で使われるロボットCLOiDのデモとプレゼンテーションを行い、大勢の人でにぎわっていた。実際にやっていたことは、それほど複雑なことではなく、また、動きもかなりゆっくりで、これでは、まだちょっと、という評価が多かったようだ。ただ、人の代わりにロボットが家事をやってくれるという、将来の家庭でのロボット利用の姿を示すという意味では、悪くない展示だったように感じた。
Humanoid(人型ロボット)の展示は38社あったとのことだが、そのうち21社は中国企業による展示ということで、中国がロボットに大きな力を入れていることが、よくわかる。ロボットに限らず、中国企業のCESでの展示が、メイン会場では、年々大きくなっている。なかでも、家電を中心に展示していたHisense、Dreame、TCLなどは、メイン会場の中心に大きなブースを構え、CESの中心的な存在に見える。
以前のCESと言えば、日本企業の大きなブースも多かった。それが今年はPanasonicくらいしか、大きなブースは見当たらない。昨年まで大きなブースを構えていたSonyも、今年は取りやめ、HONDAと共同開発している自動車AFEELAを展示していたにとどまっていた。韓国はLGが相変わらず大きなブースをメイン会場の中心に置いていたが、Samsungはメイン会場におらず、別なホテル会場での展示だった。時間の関係でそこまでは訪問できなかったが、ブースの大きさ自体は、かなり大きなものを構えていたとのことだ。韓国の他のChaebol(韓国の財閥系)では、SK Groupがメイン会場で大きなブースを構えていたが、Hyundaiは、自動車関連の展示が中心だった。
CESのこれまでを見てくると、以前はもともとの名前であるConsumer Electronics Showに合致した、テレビなど家電の展示が多く、3Dテレビ、LCDからOLEDへ、4K、8Kへの進化が、CESで多くみられた。その後、自動運転車が出てきて、一斉に大手自動車メーカーが出展した。また、ドローンの出現などで、CESの雰囲気も大きく変化していった。イベントの名称も、2010年からCESが正式名となり、家電だけでなく、最新ITの展示会となっている。
何年か前にはGoogleが、メイン会場前に大きな特設会場を構え、入場するには長い列に並ぶ必要があった。Microsoftは毎年メイン会場の入り口あたりに大きなブースを構え、主にパートナー企業のソリューションを展示していた。しかし、両社とも大きな展示は、もはや見当たらない。Appleは以前からCESには参加していない。Metaも以前からCESでの展示は見たことがない。IT主力企業のGAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon、Microsoft)では、唯一Amazonを数年前から見かけるようになった。今年もAI関連、特にクラウドサービスのAWS (Amazon Web Services)の展示があったが、メイン会場ではなく、ブースの大きさも、それほど大きくはない。主力IT企業が不在に近いCESとなっている。一方、スタートアップ企業の参加は、年々増えていたが、今年は1,200社と、昨年の1,400社から、少し減少している。
日本とお隣の韓国を比較すると、いかに韓国が積極的にCESに参加しており、日本がそれほどでもないことがよくわかる。今年の出展社数は、韓国が853社と、米国、中国に続き3位。それに比べ、日本は105社どまりだ。スタートアップ企業の出展で比べても、韓国が411社と世界でトップ。日本はJETRO(日本貿易振興機構)の支援するJ-Startupブースへの出展も、31社にとどまっている。韓国企業が世界市場に注目し、スタートアップの活動も活発なのに比べ、日本企業の世界への意気込み、スタートアップの活動も、残念ながら力不足のように見える。
今年のCESへの来場者は148,000人と、これまでで最高だったようだ。しかし、出展社数は4,100と、前年の4,500社から1割ほど減っている。そして米国の大手IT企業がほとんど参加せず、日本の大手家電、IT関連企業もあまりみられなくなった。CESは、いまや中国、韓国の大手企業、世界各国の中堅中小企業、それに世界のスタートアップ企業の展示が中心になってきた。来年はCESが60周年を迎えるが、少し曲がり角にさしかかってきた感もある。
黒田 豊
2026年2月
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