IT業界の主役はGAFAMからMagnificent Sevenへ、そしてMANGOS?
IT業界が大きく注目された始めたのは、おそらく1960年代、IBMが汎用コンピューターSystem/360を発表したころからだろう。その後、1970年のSystem/370の発表と続き、1970年代までは、IBMがIT業界の主役だった。大型コンピューターの時代だ。その後、1981年にIBM PCが発表され、パソコンの時代に入ると、IBM互換機も多数現れ、主役はIBMではなく、そこで使われた中心となる半導体チップを提供したIntelと、ソフトウェアの中核となるOperating System(OS)を提供したMicrosoftが、ITの主役に躍り出た。その後しばらくは、大型コンピューターではIBM、パソコンではIntelとMicrosoftが主役の時代が続いた。
そして1995年のインターネットの登場。ここで主役に躍り出たのは、GAFA(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon)だ。IBMやMicrosoftはインターネットに対する対応が遅れ、主役の座から離れて行った。しかし、Microsoftはその後、クラウドサービスのAzureや、企業向けコラボレーション・ツールのTeamsで盛り返し、ITの主役はMicrosoftを加えたGAFAMの時代へと進んだ。さらに、2023年ころには、AIの広がりとともに、その中核をなす半導体チップで急成長したNvidia、そして電気自動車から自動運転車、さらにはAIへとビジネスを広げたTeslaを加え、Magnificent Sevenと言われるようになった。
これに加え、昨年あたりからMANGOSという言葉も使われ始めている。これは、Meta、Anthropic、Nvidia、Google、OpenAI、SpaceXの6社のことを言っており、ITの主役というよりも、AI分野における主役たちだ。Magnificent SevenからMANGOSで抜けたApple、Microsoft、Amazonが、ITの主役から抜け落ちた、という話ではない。SpaceXは先月、これまでにない最大規模の株式上場(IPO)を行い、現在も株式時価総額が7位と、一気に注目されている。SpaceXはもともと宇宙産業を主力としているが、昨年3月にxAIを傘下に収めており、宇宙産業だけでなく、AI企業としても評価されている。
AnthropicとOpenAIは、AIモデルの覇権争いを行っており、両社ともこの秋には大型株式上場を予定しているので、現在もっとも注目される2社だ。Googleは、この2社とともに、AIの中核企業をなしており、NvidiaがAI関連半導体の主役であることに、変わりない。MANGOSの最後の1社Metaについては、少し疑問に思う人もいるかもしれない。私も少し疑問を持ち、もしかすると、このMはMetaではなく、Microsoftなのではないか、と思ったりもした。実際、そのようにいう人もいるが、一般的には、このMはMetaと考える人のほうが多いようだ。MicrosoftがAI分野の主役リストに入っていない別の理由は、MicrosoftのAIは、一部独自モデルがあるものの、OpenAIとのパートナーシップや、Anthropicとのパートナーシップもあることから、これら企業と重複するために入っていない、という話もあるようだ。
Metaがこのリストに入っている理由は、Metaが会社を大きくAIにシフトし、AI企業を目指して多くのAI人材を高額な報酬で雇用し、さらにAI向けデータセンター建設のために多額の投資を行っている点が挙げられる。また、MetaはLlamaという独自のAIモデルをもっており、基本的にこれをオープンに提供している。このあたりが評価されてのことと思われるが、株価は最近、伸び悩んでおり、他の5社に比べると、少し弱い立場に見える。ちなみに、このMANGOSという呼び名は、まだ確定したものではなく、今後その言葉自体も変わって来る可能性がある。
さて、ITの主役という話に戻ると、そのうちの3社が、この1ヶ月ほどの間に、年に一度の開発者向けイベントを開催した。Google I/O 2026が5月中旬、Microsoft Build 2026が6月初め、Apple WWDC 2026が6月上旬に行われた。Googleは、予想どおりほぼ全面的にAIの話が中心のイベントとなった。3年半前にOpenAIがChatGPTを発表したとき、急遽自社の生成AIも発表したものの、OpenAIに比べ、遅れていることは否めなかった。そのため、その後の3年半は、AIにおける首位を奪還すべく全力を尽くし、いまではOpenAIと対等、あるいはそれをしのぐ状況になっている。
個別の発表で、私が特に注目したのは、Googleが得意とするサーチへのAI活用による新しいサーチの形、よりパーソナライズされたサーチだ。ChatGPTが登場して以来、ユーザーはGoogleにキーワードで何かをサーチすることをやめ、ChatGPTになんでも聞いてしまうことを始めた。これが進むと、これまでGoogleの独壇場だった、ユーザーがインターネットで何かをするときの入り口が、奪われてしまう。これを奪還するのが、今回の発表だ。これまでのサーチの概念が全く変わり、AIと相談しながら必要な情報を見つける、という形に大きく変わった。
マルチモーダルAIモデルのGemini Omniも注目だ。Gemini Omniでは、動画を理解し、編集するなど、マルチモーダル対応がかなり進んだ感じだ。また、Geminiをベースとした、主に企業向けのAI Agent開発プラットフォームGemini Enterprise Agent Platformなど、Geminiを中心としたGoogleのAIの世界が、さらに広がっている。
Microsoftのイベントで大きく目を引いたのは、Nvidiaと共同で開発した、パソコン内でAIが使える、Nvidiaの半導体チップを使った新しいパソコン、Microsoft Surface Ultraだ。イベントのメインのプレゼンテーションには、NvidiaのHuang CEOも登場し、この新たなパソコンの発表を盛り上げた。これまで、AI処理の実行といえば、クラウド上のデータセンターでの処理というのが常識で、パソコン上でAIを動かすことは考えられなかった。この概念を大きく変え、パソコン上でもAIを実行、さらにはAIエージェントの開発も行える環境を作ったことは、極めて大きい。AIエージェントとして、昨年11月に発表され、瞬く間に世界に広がった、オープンソースのOpen Clawが、Windows上で直接使えるようにもしている。これによって、自分のパソコン上で、自分のためのAIエージェントを実行できることになる。
もう一つ、大きな発表としては、AI Agentに関する発表だ。Microsoftはユーザーが自分でAI Agentを簡単に作れるプラットフォームを用意。また、ユーザーがすぐに使えるAgentとして、Microsoft Scoutも用意した。パソコンのWindowsに始まり、WordやPowerPointなどを含むOffice、そして企業内コラボレーション・ツールのTeamsを揃え、企業ユーザーがこれからどんどん使うであろうAI Agentの分野でも、プラットフォームやすぐに使えるツールを提供し、これまで、ユーザーをCopilotで支援してきたものを、大きく前進させたのが、今回の発表だ。
さて、最後にイベントを行ったAppleはどうだったか。Appleも御多分にもれず、AIを前面に出していた。2年前にAI Intelligenceという言葉は出したものの、実態はあまりなく、単なる構想にしか見えなかった。それが今年は、実体が見えるものとなった。まずはSiriが新しくSiri AIとなり、ユーザーのコンパニオン的な存在となった。また、Apple Intelligenceコンセプトのもと、広くAIが活用されているように見える。ただ、Microsoftのように、AI Agentを構築して、タスクをどんどんAIにやってもらう、というイメージとは、少し異なる。
Appleの特徴は、創業当初から、ユーザーに「使いやすい製品」の提供、そしてセキュリティやプライバシーに力を入れた、安心して使える製品だ。今回の発表を見ても、AIの機能という話よりも、AIを意識しない、使いやすさが前面に出ているように感じた。そもそもAIモデルは自社開発のものではなく、Googleとの提携により、Google Geminiを使っている。それをユーザーに意識させず、いかに使い易くするかに注力した結果の発表といえる。AppleのAI分野での戦い方は、以前にもこのコラムで書いたように、多額の投資を必要とするAIモデルそのものの開発で他社と争うのではなく、自社が得意な、ユーザーにAIを意識させずに、使いやすさや安全性を追求するものだ。Appleのこの方向性は、悪くない。MicrosoftとAppleは、MANGOSからは、はずれているが、現在のITの主役の一角であることに変わりはない。
黒田 豊
2026年7月
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